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暮らしの中の行動経済学

汗水垂らして稼いだ10万円と、ギャンブルで当たった10万円。どちらも同じ10万円ですが、同じ使い方をするでしょうか?

“お金に色はない”といわれる通り、経済学では長らく「人はどのようなときも合理的に動く」という前提のもとで研究がされてきました。この前提は、理論を構築しやすいものの、現実の生活や行動とそぐわず、説明が難しいことが多くありました。

1990年代以降、心理学の要素や分析手法を取り入れ、実際の経済行動やそれに伴う市場の動きを解明しようとする「行動経済学」の研究が急速に進み、2017年にはその理論的発展に貢献した功績で、米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞しました。

コンピューターのように的確な答えを計算できても、必ずしもその計算結果通りではなく、感情で動くのが人間であり、どのようなケースで“合理的ではない”行動をしてしまうのか、研究が進められています。

行動経済学の実践的な例はスーパーなどでも見られます。

同じ商品につき、「定価1万円が特別価格5,900円」と「特別価格5,900円」と表示するのでは、どちらが売れるでしょうか。

合理的な判断を前提にすると、支払う金額も手に入る商品も同じなので、2つは同じであるべきです。

ところが、「定価1万円」という印象的な数字や情報があると、消費者はついそれを基準に考えてしまい、本当に通常1万円なのかどうか分からないにもかかわらず、より「お得」に感じ、購買意欲を掻き立てられるものです。これを行動経済学では「アンカリング(いかり)効果」といいます。

アンカリング効果は行動経済学のわかりやすい一例ですが、このように“合理的な判断”ができなくなる自らの癖を理解することは、冷静な投資判断にも役立ちます。

人が合理的な判断ができなくなる理由を解き明かす行動経済学では、投資行動についても多くの研究がなされています。

例えば、ある会社の株を1,000円で購入したとします。自分のお金を投資する際、人はとかく少し値上がって1,100円となると、急いで利益を確定させたくなり、逆に900円を割ってしまうと、“もう少し我慢だ”などと考えてしまいがちです。

こうした利益が出ているときは確実な利益を得ようとし、損をしているときは損を回避しようとするという心理学の理論を、「プロスペクト理論」といいます。

気持ちのままに投資を行うと、結果として、利益が小さいうちに売却したり、損切りができないまま時間が過ぎていったりするということが起こりがちです。とはいえ、感情に逆らって反対の売買をすることが正解なのではありません。

ときにはお金に色をつけてしまうことを自覚し、それが投資行動に影響を及ぼすリスクの存在を認識しておくことが、短絡的な誤りを減らすことにつながります。そして、多くの個人投資家にとって、相場環境によらず、コツコツと長期分散投資を行うことが、合理的な投資を続ける上で結果的に適しているといえるでしょう。